※本記事は2019年10月から月刊珠算情報誌「サンライズ」に連載された記事を再編集して掲載しています。
今回はかなりマニアックな内容。
FaSTの難易度は5段階(初級・中級・上級・超上級・挑戦)に分かれており、今回の大会では一番下と上を除いた3レベルを使用しました。問題のレベルは学年毎に決まっているのではなく自分で決めることができます。また、各種目の点数が10点以上なら上級は+20点、超上級なら+50点されるというルールで総合順位を決めました。
加点狙い・桁幅向上を狙って難しいレベルに挑戦しても良いし、満点狙い・スピードアップを狙って簡単なレベルを選択することもできます。
問題内容
① 上級までのレベルは、20・10・10・5・3・2問ごとに難易度が上昇していきます(表参照)。前半は、「動作の速さ」を身に付けられるように簡単な問題を多くしています。後半は、難しい問題を少なくすることで時間的にも精神的にも「埋め」がしやすいようになっています。「埋め」をして桁幅が伸びることで前半の速度はさらに上がっていきます。
② 超上級以降は、前半スピード・後半桁幅重視の出題方式ではなく、現在の全国大会で主流となっている桁数を気持ちよく全力で計算してもらうための問題です。一方で後半10題に現在どの大会にも出題されていない(と思われる)7×7桁が現れます。これを攻略することで全国大会の満点に近付けるでしょう。
③ かけ算を主軸に各レベルの、種目の難易度(1問を解くのにかかる時間・精神力)が同一になるように作問しました。例えば、FaST超上級レベルの実力者ならわり算の省略が可能なため、わり算の答えの桁数がかけ算の問題に対して2桁多くなっています。
「例:7桁×7桁=14桁⇔16桁÷7桁=9桁」
これらの内容は「FaST活用講座」という記事に更に詳しくまとめるつもりです
かけわりのコンセプト
初級(そろばん8級~暗算3級レベル):
全ての問題が1桁×◯桁=なので、2×2桁を教わる前でも計算できる。この段階でスピードと桁幅を身に付けることで、初歩の難関そろばん6級が余裕になる。
中級(暗算3級~全珠連暗算中段位レベル):
2×2桁のスピードと4×4桁(暗算十段)を解く桁幅が欲しい。
上級(全珠連暗算高段位~全国大会入賞レベル):
3×3桁のスピードと5×6桁(全国大会の大半)を解く桁幅が欲しい。
超上級(全国大会入賞~日本一レベル):
全国レベルの実力者でも絶対に満点が取れない問題で日本一を決めたい。(特別参加してもらった土屋選手がわり算終わりそうで焦った・・・。)
挑戦(日本一以上~未来の実力者レベル)
将来、とんでもない指導・練習方法が見つかって超上級がクリアされてしまった時でも対応できるように物凄く難しく作った悪ノリ半分・本気半分の問題。でも、この問題のかけ算攻略方法は既に考案済み。なお見取算については⑧で解説します。
作問方式
すべての種目で末尾の0以外はあえてランダムに見える数字を使用しています(所謂「汚い問題」と呼ばれている作問方式で、今はあえてそう呼びます)。
ゾロ目が混ざった「汚い問題」の計算は計算過程にゾロ目が頻出しやすく暗算での計算は非常に難解で、現在のほとんどの検定試験・競技大会は「綺麗な問題」でできています。
かつて手作問の技術が発達していた時代は、縦も横も同じ数字が一切ない数独型の問題でなければならない、という風潮がありましたが、このような「綺麗過ぎる問題」は答えの末尾を見れば誤答を発見できるという欠点がありました。そんな時代の名残もあって、今でもそろばんの問題は綺麗な問題が多いのですが、社会に出たら綺麗な問題ばかりではありません。むしろ、一般の人はそろばんができる人に変な問題を出題しがちです(例:「暗算できるんでしょ?40002×33333は?」)。
自分も含めて、作問ができる先生は本番に忠実な「綺麗な問題」を作りたがります。しかし、ある時「汚い問題」で練習している教室・選手の方が上手になっていると気が付きました。もっと言えば、綺麗と汚いを両方使いこなしている教室が最強でした。
社会に出たときのために、またあらゆる問題を攻略するためにFaSTではあえて、汚い問題を採用しました。ただし、読上算は「3億25円なり」といった計算の実力以外の能力が必要になってくる問題が出題されるのを避けるため、フラッシュ暗算は難易度を一定にするというフラッシュ暗算協会認定ソフトの仕様上、「綺麗な問題」を出題しています。
もし興味をお持ちの場合はFaSTのHP上で模擬問題を公開していますのでご覧ください。
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